作品概要
『ペリリュー 楽園のゲルニカ』(ペリリュー らくえんのゲルニカ)は武田一義による日本の漫画。『ヤングアニマル』(白泉社)にて2016年4号から2021年8号まで連載された。原案協力は平塚柾緒(太平洋戦争研究会)。2017年日本漫画家協会賞優秀賞。同誌2022年7号から、「本編では拾いきれなかったエピソード」が描かれたスピンオフ『ペリリュー –外伝–』が短期集中連載として連載された。 ペリリューの戦いの史実を参考にしながらフィクションとして構成される。南洋の楽園ペリリュー島を舞台として、22歳で漫画家志望の田丸一等兵の視点から日米の地上戦を描いており、人物を優しい筆致で可愛らしくデフォルメしたり、美しい景色を背景とする一方で、激しい戦闘や傷ついた死体など凄惨な場面も描写する。主人公の田丸は漫画を描く気弱な若者で、緊張感をなごませる。 親しみやすい三頭身のキャラクターが戦場の悲惨な現実に直面していくため、読後感の重い作品。戦争漫画としては異例なことに発行部数が2年で30万部を超えた。読者からは「イラストはかわいらしいがテーマは凄まじい。戦争について考えさせられる」というような感想が寄せられる。 メディアミックスとして、連載終了と同時にアニメ化が発表され、2025年12月に劇場公開された。
あらすじ
本作品は史実を参考にしたフィクションであり、実在の人物・団体・事件等とは一切無関係である。 物語の冒頭では、ペリリュー島の海岸を歩く後姿の人物が「ここに祖父がいた」と語る。この時点では主人公の孫とは明言されておらず、誰の孫であるかは物語の後半で明らかになっていく。 昭和19年夏、漫画家志望の田丸一等兵はペリリュー島に駐屯していた。島はサンゴ礁に囲まれ、美しい森に覆われた南洋の楽園であった。同年9月4日、米軍の第3艦隊艦艇約800隻、兵員約4万人がペリリュー島に向けて出動する。動機は島の飛行場を奪ってフィリピン攻略の足掛かりとするためであった。これを迎え撃つ日本軍は、約1万人からなるペリリュー守備隊であった。守備隊は持久戦に徹することを作戦全般の方針としており、各所に築いた洞窟陣地は守備隊全員を収容できる規模であった。米軍は上陸前に連日空襲をしかけ飛行場周辺のジャングルを焼き払う。9月15日早朝、米軍第1海兵師団がペリリュー島に上陸した。 西浜の戦いを生き延びた田丸は、米軍上陸から3日後、仲間と共に洞窟に潜伏していた。昼夜問わず米軍掃討部隊に脅かされ、酷暑の中で激しい川気に苦しみながら命懸けで水を得る。開戦後およそ1か月、かつて南洋の楽園と呼ばれていたペリリュー島は地獄と化していた。田丸たちは昼は騒音と振動、蒸し暑さの中で眠り、夜は食糧を探す生活を続けていた。 一方、抗戦を続ける守備隊本部にも米軍の砲火が迫り、武器弾薬と食料が失われた極限状態の中で、ついに玉砕の許可を電報で請う。米軍上陸から2か月半たった昭和19年11月24日、守備隊本部が玉砕し、組織的な戦闘を終える。生き残った田丸たちは、本部玉砕の事実を知らぬまま、水と食糧を求めてさまよう。米軍に追われ、極度の飢えと疲れで意識が朦朧とする中、田丸は幼い2人の子供の姿を見る。 焦土と化したペリリュー島に草木が戻り始めたころ、田丸たちは草木の茂みに隠れつつ食糧を探す日々を過ごしていた。ある日、洞窟の奥で米軍の缶詰とともにメッセージを見つける。それは米軍の糧秣を奪取する方法を教えるから集まれというメッセージだった。昭和20年3月10日深夜、東京大空襲と同じころ、ペリリュー島の兵士たちは一団となって米軍陣地に侵入し、糧秣を奪取することに成功する。食糧を手に入れた兵士たちは徹底持久の目標を再び掲げ、集団生活を始める。飢えを免れて一時の平穏を得る。しかし、米軍に隠れ処を狙い撃ちにされ、平穏な日々が一変する。敵襲により1日で多数の仲間を失う。生き延びた兵士たちは立て直しを図る。そして8月15日、日本は終戦を迎える。 ペリリュー島の兵士たちは終戦を知らずに潜伏を続けていた。平穏な日々が続く。最後の敵襲から1年半たった昭和21年秋、島民が米軍の艦に乗って島へ帰ってくる。終戦を推測した吉敷は米軍のゴミ捨て場から新聞や雑誌を持ち帰る。そこには英文で終戦と書かれていた。祖国の人々が米兵と共に満面の笑顔で写真を撮っていた。敗けられない戦いのはずだった。そう言われて命を懸けてきた。生き残った兵士たちは動揺する。事実を確かめるため、病気の仲間を救うため、吉敷は投降を決意する。 昭和21年の暮れ、投降未遂で捕まった吉敷と田丸は、仲間によって監禁されていた。2人の逮捕監禁を命じた島田少尉は、仲間を捕虜に取られると直ちに隊を率いて米兵を襲撃し、7人全員を救い出す。日本兵の組織的抵抗を重く見た米軍は、グアム島から一個大隊を呼び寄せ、投降勧告ビラを撒いて探索網を広げる。この間、終戦を確信する吉敷は投降を諦めず、脱走の機会を窺う。 昭和22年1月、小杉伍長は一計を案じ、隠していた酒瓶に燃料用アルコールを混ぜ、部隊に差し入れる。部隊は親睦会を開くが、酒を飲んだ兵士たちが中毒症状を起こして次々倒れる。吉敷と田丸は騒動に乗じて脱走に成功するが、島田少尉はただちに追跡命令を出す。吉敷と田丸は島民の住む村近くに潜伏する。だが一人捜索に来た島田に見つかる。吉敷は銃をつきつけ説得するが、島田に拳銃で撃たれてしまう。田丸は吉敷を支え逃げるが、重傷を負った吉敷は絶命。翌朝、田丸は吉敷の遺体を森に隠して一人で米軍基地に投降し、やはり戦争は終わっていたと知る。 昭和22年3月、敗残兵の抵抗に手を焼いていた米軍は、田丸や日本軍元参謀長らを交えて彼らを帰国させる策を練る。田丸は終戦を信じない兵士たちを説得するため家族に手紙を書いてもらうことを提案する。田丸が隠した吉敷の遺体は消えていた。4月、家族からの手紙が集まると、田丸は兵士たちがこもる洞窟に手紙を届ける。手紙を読んだ兵士たちは泣き出し、参謀長の帰国命令を受け入れる。 5月、田丸たち34名の帰国が決まる。
スタッフ
声優
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